俺の呪い代行の儀式は完了した。手応えなどはなかったが、あのイメージは消えることがなかった。あのAの最後の顔、飛び込んだ瞬間のキーとい電車の嫌なブレーキの金切り音、夢と呼ぶには生々しかった。 俺はあの駅に行ってみようかと思った。行ってみて、自分が見た妄想と違う点があればそれが妄想であると信じられると思ったからだ。しかしその瞬間、恐ろしいことを耳にしたのだ。 A課長が亡くなりました。会社の定期報告のメールでこんな文章を目にした。俺はその瞬間、色んな考えが逡巡した。なにが?なぜ?いつ?どうして?・・・まさか俺の・・・? 恐る恐るリンクをクリックした。A課長が帰宅時に某駅から飛び込み自殺をされました。つきましては葬儀の・・・・それ以降は読む必要もないだろう。 Aが・・・あの駅から・・・飛び込み・・・偶然・・・なのだろうか・・・。 俺の手はいつの間にかぐちゃぐちゃの汗でぬれてた。動悸が高まり、めまいもする。これは後悔の高まりでないことを誰よりも俺が知っていた。それは一瞬で息を整え、つぎの雄たけびを上げた。勝利の雄たけびなんてかっこいいものじゃない、まるで野生の動物のがその日生き延びたことを天に告げるような生命の叫びだ。 心配した両親が下から登ってきた。心配んだ、父さん、母さん、ちょっとすごいことがあっただけなんだ。鬱の症状をしっている両親は怪訝な顔で心配そうな顔で俺を見ていた。 俺の呪いがAを殺した!端的にもっと言おう、現実を味わおう、俺がAを殺した!ぶち殺してやったんだ!あの時に見た想像、あれこそが呪いの形だったんだ。牛に出会う、牛とはなんだ。Aはあの時、俺の顔を見たはず、それでも何も言わなかった、もしかしたらあの時Aが見た俺は、俺こそが「牛」だったんじゃないだろうか。